前回、整体の体系の中で、
整体操法、愉気法、活元運動まで説明いたしました。
その続きからです。

「体癖論」:身体の特徴を、大きく5
(細かくは
12種類、そしてその複合)に分類したものです。
動作、気持ち、考え方、内臓などの生理的な働き、
咄嗟の時の行動、が無意識に現れていて、
自分のこと、相手のこと、その関係を理解しようとするものです。
整体では、基本的に“体癖”に沿って“操法”していきます。

「潜在意識教育」:意識的に知識を教えるのではなく、
体癖なども踏まえて、その人の潜在意識を刺激することで、
その人の進む方向へと自然に誘導していくもの。
“体癖論”とともに、子育てや教育、人間関係に大きく関わる。
整体では、これがあるために、整体操法を、個人指導として捉えています。

少し説明が続きましたが、
整体が、体を真直ぐにする・リラクゼーション・治療的要素
だけではないことは、お分かり頂けたかと思います。

整体”は、これらの体系から、
一年を通じて季節の流れに沿った生活の仕方や、
妊娠中・出産や月経など女性特有の体、
育児、思春期・更年期・老年期そして死といった
個人の生活の術から願望の実現方法まで、
そして嫁姑や看取り方などの関係性まで散りばめられています。

季節の対応で少し例を上げると…。

整体の場合、春夏秋冬に梅雨を加えた五季に分け、
季節の特徴に沿って生活することで、
その季節特有の刺激でからだが乱れないように整体(整った体)を保ちます。

秋は泌尿器の季節です。
一年の内で、最も冷えが体に入りやすく、その影響を受けます。
冷えると、体が捻じれるので、痛みなども出やすく、
心理的には闘争的になって、夫婦喧嘩など、
周りの人との軋轢が生じやすくなります。
その解消として、運動会や秋祭りなど、発散する行事がぴったりです。

冬は、神経系の季節です。
外に出て活発に動くよりも、家の中で本を読んだりして、じっと過ごします。
動物が冬眠するようなものですね。
冬は、乾燥が激しいので、意外な事でしょうが、
水が最も必要な時期になります。
冬に水を摂ることは、一年を通した、身体の瑞々しさの基盤になります。

女性の身体であれば、
生殖器が身体の働きの中心になるため、骨盤の動きが重要になります。
その骨盤の動きを鈍くするのが、頭や眼への刺激・使い過ぎ、食べ過ぎにです。
特に、妊娠・出産や整理中などは、ゆったりと過ごすのが良いです。
しかし、現代の社会生活では、仕事の関係などでなかなか難しくなってますね。
そのため、それらの刺激から身体を取り戻す知恵が必要になってきます。

このように、体・肉体の動きは、
内臓や生理的な反応、頭や感情とともに、身体の一面であり、
それらは、環境からの刺激と密接に関連しているので、
生きること全てが整体に関わりがあると言えます。

身体が整っている(=整体)ということは、どういうことかというと、
生きている中で起こる、様々な刺激に影響を受けても、
乱れから戻る力がある、弾力のある身体と言えます。

呼吸が楽で心地良い。
動きがスムーズで勢いが有る。
だから、自分の力を発揮することができる。
そして、面白いところが、
無意識の判断、欲求に任せることができるということです。
無意識の判断・身体の欲求は、
“今、ここ”の損得や、見えている良いこと、に惑わされずに、
結果的に良い方向・進む方向を本能的に選びます。

単純に、身体は、
身体にとって不快なコト・モノを避け、快適なコト・モノを選びます。
これが、不整体だと、
“今、ここ”にある見た目の良さに惑わされて、
結果的にうまくいかないことになります。
つまり、整体(整った身体)であれば、運が良くなるということ。

野口整体を体系づけられた野口晴哉先生は、
「全生」という言葉を残されています。
これは、活き活きと自分の力を発揮し、
楽しく、快く生を全うするということです。

その「全生」に必要な智慧が“整体”の中に詰まっているのです。

ここまでお付き合い頂けた方は、
“整体”が、一般的にイメージする整体と、
かなり違うことが、ご理解頂けたのではないでしょうか。

最初に戻ります。
「整体師です。」と答えると、
「体のこと色々分かるんですね」とか「
触れるだけで私のすべてが分かるんですね!」
と言われることもよくあります。

そんなスタンド使いや悪魔の実の能力者ではありません。

体の構造は分かっても、
身体は一人一人違い、想像できない反応や変化をし、
やればやるほど分からない。
だからこそ、身体はとても面白い。
整っていると、もっと面白い。
と、感じています。
これは整体の説明ではなく、個人的な感想ですね。

自分を見つめても、自分は分からないのですが、
身体に向き合えば、
“個”としての未熟な自分が見えてきて、
常に可能性を秘めた、いとおしい身体に
無謀な戦いを挑んでいるように思え、
整体(整った身体)への信頼感へとつながります。

それが、全生へと繋がっていくのでしょう。

※この文章は、紙ベースで整体の間に来られた方にお渡ししている、
調体和塾“い座”の通信『瑞々しい生活』で掲載したものです。

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