和歌山でのおとあそび工房ワークショップ、後編です。

 

第二部開始で、沼田さんから希望を聞かれると、
「歌」という声が上がる。
三人が出てきて、思い思いに歌を披露する。

 

 

見事にバラバラ。

 

 

しかし、そのバラバラな歌の重なりが、
思った以上に心地よく、面白い。

 

 

作品としては、一部の紹介パフォーマンスで、
おとあそび工房のお得意形式が出たのだが、
会場の雰囲気は、この「歌」が、
最もおとあそび工房っぽさが出ていた。

「次、踊りたい人!」
という沼田さんの声に反応して、
おとあそび工房のメンバー、和歌山の参加者さん達、
入り乱れて、楽しそうに踊る。

 

 

ピアノや、様々な楽器が勢いをあおっていく。

 

 

次は木琴。
数人が前へ出て好きなように演奏を始めるが、

 

 

太鼓や踊りが混ざり込んでいく。

 

 

あっという間に最後の時間が迫ってくる。
第一部のおとあそび工房の紹介パフォーマンスの時、
書いてもらった絵の中に、たくさんの顔が描かれたものがあった。
それを作者に持ってもらう。
絵が描かれた表が見えると、皆が声を出す。
ひっくり返して真っ白い裏面になると声を止める。
そんな単純な遊び。
説明を聴くだけでは、何が面白んだろうと思ってしまう。
しかし、これも、非常に面白いものになった。

 

 

作者がなかなか表を見せない。
じらしてじらして、するうちに、
会場全体の意識が作者の動きに凝集する。
表が出ないイライラ、ワクワクといった焦燥・期待。

 

 

ちょっとしたことで、じらされている時間がキラキラしている。
チラッと絵の端がまくれ上がっただけで、
皆が待ってましたとばかりに一斉に声を出す。

が、一瞬でひっくり返されてしまう。
声を出すのも一瞬で途切れる。
フラストレーションが溜まる。
「ちゃんと出してくれ」
「しっかり見せてくれ!」
「声を出したい!」
そんな地味なやり取りが続く。

なんて贅沢で濃密な時間、空間。

しかし、これ以上続くと、飽きてしまうかもという、
良いじらし感が高まりきった頂点。

 

 

作者がパッと絵を表に掲げた。

 

 

「あー!」「わー!」
爆発するように声が上がる。

 

 

皆の意識を惹き付け、じらし、ずらし、
冷める前、高まり切る寸前での開示。
作者は、会場の雰囲気を見て、
計算してやっていたのではない。
後で聞くと、
もともとじらすのは好きらしく、
意図的であったようだ。

しかし、機を捉えることは、
計算ではできない。
計算してやると、
確実にそれらのタイミングはズレてしまう。
空気を読もうとしたら、
読んだ瞬間に次の空気に流れ、変化している。
だから、間に合わない。

それを、ワークショップ参加二回目の、
一般の参加者がやってしまう。
それは、技術では出来ない。

参加者達それぞれに、そして、その場の中で起ることに
ちゃんと関わり合って、
それに対して反射的に身体が反応して湧き起こる。
だから、その場に居る人全員の心が動く。
だから、面白い。

 

 

 

おとあそび工房の真骨頂が表出した。
そんなパフォーマンスが、
和歌山でのワークショップを締めくくった。

 

 

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